職種×価値観調査

慶應大学商学部牛島ゼミにて、各職種に就く社会人がどのような価値観で仕事を行っているか調査したレポートです。【学生みなさまへ】価値観カテゴリーが1記事に対して複数つけられることが分かったので、複数カテゴリ付けを奥居の方で修正しています!新規登録時は、先輩の価値観を全部カテゴリ付けしてください

かなこ①(総合電機メーカー業界/経理/4年目)

1.先輩のお仕事

☆5月16日(土)インタビュー実施

■会社での先輩のお仕事とは?
 先輩は工場の経理として、工場が出荷する製品の原価計算を行っています。また仕事をする上で、製品の製造にかかわるコストを削減して儲かるようにし、また遵法の観点から会計基準に則ってきちんと会計処理をすることが求められています。さらに損益や棚卸資産などの経営指標はとても重要であるため、先輩は製品の生産管理に携わる人と一緒に数字を作っていき、経営に関わる情報を自身が所属している事業所のトップにつなげる役割も担っています。

 そして、現在先輩の社内ではスマートグリッドを構築するために、家庭に取り付けられているスマートメーターにより「家庭でどれだけ電気を使っているのか」という情報を吸いあげて利用者と発電所間での需要と供給を最適化するシステムを作ろうとしております。特に先輩はその原価計算の担当としてプロジェクトの採算管理を行っている最中です。

 

■会社のお客様は誰?

 先輩が担当する事業のお客様は国内外の電力会社となっています。会社のお客様にはその他にも貨物をけん引する機関車や新幹線のモーターなどを納めている鉄道会社、放送局のスタジオを納めているテレビ局、上下水道システムを納めている官公庁など多岐にわたっています。

 

■そのお客様はどんな悩み・ニーズがある?

 先程先輩の会社にはたくさんのお客様がいると述べましたが、その中でも電力会社のお客様の悩み・ニーズを伺いました。電力会社にはずばり、コストの悩みが存在します。

 まず国内の電力会社は経営が苦しくなってきています。なぜかというと昨今の東日本大震災の影響で原子力発電所が稼働を停止し発電方法を火力に変えた結果燃料費が上昇したからです。

 また国外(特に新興国)のお客様はコストに対してもっとシビアです。日本の送電網は、世界一停電が少ないといわれるように非常に優れたものですが、海外のお客様が求めている送電網は日本と同じ性能というわけではありません。また、インフラ整備がなされていない国はお金がないことも多いので、その国に合うスペックと価格の送電網を考えていく必要があるのです。

 

■そのお客様はどんなニーズがある?

 先輩のお客様のニーズとは実績であります。インフラの商品は継続的に使用されるものであるため、長期にわたってメンテナンスや保守を行っていかなければなりません。またインフラの商品はオーダーメイドであり、お客様からの要望を受け入れつつ専門知識を用いて商品に必要なものを提案することが求められています。つまりお客様と会社の間に信頼関係があり、お客様が会社に対し商品の依頼をし続けるには、
実績が必要となってくるのです。

 

■会社は顧客に対してどんなサービス/商品をどうやって提供している?

 さきほど先輩のお仕事のお客様は電力会社と言いましたが、経理のお客様には、会社の投資家も含まれております。そして会社の投資家に対して、先輩は会社の業績に関わる情報をいち早く正確に提供しています。また、経理が出す部門別の損益などの数値は、その部門の「成績表」として会社内の人事評価にも関わるものであるため、「人事評価に関わる情報を扱っているのだ」という自覚と責任感を持ちつつ、数字を提供しているとのことです。

 

2.この仕事で満たされる価値観

■先輩の価値観

頼られる、優しさや誠実さなどで人柄を評価される、視野を広げる、リーダーとして皆をまとめる、良きサポート・アシスト役になる、複雑な問題を整理する、目標達成の手助けをする、責任感

 

■仕事をしていて「この価値観が満たされているな」と感じる時

【頼られる】

 経理の人が計算して提供する部門別の損益などの数値はその部門の部長さんも責任を持つことになるし、数字の一つ一つが経営トップの経営判断の材料になるため、経理と部署の人が連携しつつ時には責任をもって出す数字を変えてもらうことがあるそうです。その時に、「頼られる」という価値観が満たされていると感じるそうです。

 

【視野を広げる】

 経理という仕事で、会社の事業全体の数字を見ながら働いている時に満たされると感じるそうです。先輩は会社の商品や技術を知り視野を広げたいために、会計のスペシャリストである会計士ではなく、会社の経理になったそうです。

 

【優しさや誠実さなどで人柄を評価される】

 自分の判断1つで数字が変わってしまうこともある立場で、問題が起こってしまったら自分自身の信用を失うことになってしまうため、仕事をする際には誠実に正しく会計処理しているのだという姿勢を示しているそうです。そして、誠実に仕事をしているからこそ、部門の人に信用されるという事もあるので、「優しさや誠実さなどで人柄を評価される」という価値観が満たされていると感じるそうです。

 

【リーダーとして皆をまとめる】

 損益の見込みなどの数字を修正していくときに、部署の人を経理として率いていく必要があり、その時に「リーダーとして皆をまとめる」という価値観が満たされると感じるそうです。

 

【良きサポート・アシスト役になる】

 損益の見込みを変えるときに部署の人と一緒に戦略的に考えているときには、「良きサポート・アシスト役になる」という価値観が満たされると感じるそうです。

 

【複雑な問題を整理する】

 経理における原価計算自体そもそも難しく、計算をする上で製品の開発費の見込や為替の変化などで複雑化するため、正しく計算するために頭の中で物事を整理しているそうです。そして計算をする際の頭の整理の時に、「複雑な問題を整理する」という価値観が満たされるそうです。

 

【目標達成の手助けをする】

 経理として会社の商品が生み出されてお客様の手元に届くまでの過程と届いた後の処理どちらにおいてもお手伝いをすることがあり、その際に「目標達成の手助けをする」という価値観が満たされていると感じるそうです。

 

【責任感】

 経理の仕事全般において、しっかりと正確に会計処理をすることがしなければならないため、この価値観は常に感じているそうです。

■あなたの価値観を先輩に見せ「この価値観にこの仕事は向いているかどうか」のアドバイスをもらってください。

 私の価値観は「気心知れたメンバーに理解される」「優しさや誠実さなどの人柄を評価される」「視野を広げる」「挑戦・冒険する」「チームで頑張る」「目の前の人を支援する」「複雑な問題を整理する」「仕組みを作る」「家族や日々の暮らしを大切にする」です。そして先輩には、「固定観念を取り払って様々な仕事を知ってほしいです。特にOB訪問で仕事の本音を聞いていくことが大切です。木曽さんには管理職やお客のニーズを引き出す営業が向いていると思います。」と言われました。

 

3.この仕事に必要な能力

■この仕事に必要な能力

状況を冷静に見る力、与えられたものをやりきる責任感

 

■なぜその力が必要?

【状況を冷静に見る力】

 経理の計算により出された数字を見て、冷静にこれからの経営を考える力が求められているから。

 

【与えられたものをやりきる責任感】

 経理として予算を立てるなど数字をまとめる際は、しっかりと正確に期日通りに処理するということが求められているから。

 

■大学生活で身についたもので、仕事で活きている力はある?またそれはなぜ身についた?

 所属していた環境サークルE.C.O.で環境週間というイベントの責任者やサークルの代表をしていたことで、与えられたものをやりきる責任感や全体像を見渡す力を持つようになったそうです。与えられたものをやりきる責任感については、「イベントが失敗したら自分の責任である」と活動に対してのオーナーシップ(所有者意識)を持つようになった経験から、身についたそうです。また、全体像を見渡す力については、「全体を見て、マネジメントする」「全体を見て遅れているところがあるなら、進められるようにアドバイスをする」という経験によって体得したそうです。

 

★感想

 私はこのインタビューを通して、先輩の価値観・能力が仕事に活かされているように感じました。また、先輩が価値観を持つに至った背景はやはり経験であることから、経験をしていくことの大切さを学びました。これからゼミでは、論文を執筆したり、ディベートをしたりと様々な経験をする機会が何かと多くなると思いますが、その一つ一つの経験でどのような力・価値観を持つようになったかを考えることで、自分をもっとよく知っていきたいと思いました。

 

★取材者 商学部3年かなこ